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殺伐百合アンソロジー『Edge of Lilies』主宰:れむれむさんから
『リルヤとナツカの純白な嘘』のレビューコメントをいただきました。
■れむれむさんレビューコメント
「百合×ミステリと聞いてレビューを書くしかないと思いました!」と立候補する勢いで任されました。
あえて、ビジュアルノベルや百合ジャンルの外側の方々にも向けて、ガチ・PCゲーム育ち&自称・百合の素晴らしさ伝道師が「好き」を叫びます。
THEお姫様のリルヤ(妙齢で男性口調の天才銀髪美少女からしか得られない栄養素がある)と、目となり足となり「世界」と関わる元気なわんこ的助手の夏夏のペアが微笑ましい。いつまでも見ていたい完璧な形、確固たる「女性二人」の関係が、主人公の「わたしたち」のフィルタを通して深く掘り下げられていく。実は真っ当な百合には詳しくないのですが(こじらせた殺伐感情は第一章を読もうね!)新しいスタンダードと言ってもよい百合作品に仕上がっていました。
ミステリ部分は安楽椅子探偵ものを意識させつつ、個性豊かなキャラクターと美しいグラフィック、そして情感のこもった声優さんのボイスに癒やされます。ビジュアルノベルは、絵・音声・シナリオが合わさる総合芸術で、それを「自分だけの速度」で読み進める体験は、3つの要素がハイレベルであればあるほど贅沢なものになります。小説では地の文の「文体」が作品を形作るのだとして、本作は物語世界を絵と音声に預け切っている。最初からそうデザインされているかのように滑らかなシナリオとの間に、美しい調和がある。
百合作品として「登場人物が女性のみの作品」というのも安心感として大きなポイント。
恋人・婚約者など、肯定された同性カップルが、現実の世界よりも幾分あたたかに、これでもかと展開されます。正直に言ってしまいましょう。安全で「閉じた関係性」をセールスポイントとしてドラマを切り捨てる風潮には、私も苦手意識があります。百合が苦手な人の多くは、少女たちが外の世界との関係や自他の変化を望まず「内側でよろしくやる」ことに陥りがちな設定を退屈に感じている(当社調べ)ためです。
しかし! 本作は、主人公の少女(夏夏は二十歳ですよ!)たちが、積極的に世界と関わり、自ら他者に干渉し、変化を与えていく。その開放感に好感が持てました。作中で夏夏が「わたしは世界を見たいんです。語りたいんです」とリルヤに告げるシーンが、その前向きさを物語っています。閉じた箱庭という陥穽に嵌まることなく、各章で「それぞれに生きている」者たちを描き、起・結でのリフレインによって「成長」を読み取れる。様々な他者との交流を通して、新しい視点を持っていく。積極的に「世界」と関わっていく夏夏が、百合作品にしては必要以上の情報が、私に『光』をもたらしてくれる(リルヤ面)。
百合とは、それぞれの女性が主人公になり得る作品だと考えています。
「私はこういう百合が見たかった」と尊さに浄化される……だけに留まらない! 複雑な人間模様、変化のドラマを見せてくれたのが『リルナツ』でした。長年『闇』の百合ミステリ(?)小説を書き、そこに根ざすファン兼作家として、今こうした作品が見られるのは、はっきり言って希望です。
ビジュアルノベル好きも、百合好きは言うまでもなく、『リルナツ』をプレイして『光』を感じよう!!
発売1周年おめでとうございます。
最後に、「レイニーブルー味」の飴ちゃん、商品化してくれませんかね。
<殺伐百合アンソロジー『Edge of Lilies』>
『殺伐百合』を題材とした短編小説・イラスト・コラムを収録した400頁超・総勢20名参加の同人誌。
カバーイラストは南方純&高河ゆん。即売会の他、BOOTH・メロンブックス等にて販売中。
書籍詳細:https://0th.page/book/B09Q29RZVF/ (発行元:殺伐連邦)
<れむれむ>
作家。サークル「殺伐連邦」主宰、出版社「零合舎」代表。商業の仕事歴に百合総合文芸誌『零合』各号(企画・責任編集・寄稿
)。三度の飯よりアニメ好き。
れむれむ Xアカウント(@REMUx2):https://x.com/REMUx2